「映画の経験はないんですけど、買っちゃいました」
2022年の秋、まだ会社員を卒業して1年も経っていない頃、わたしはある映画の上映会場の入り口で、そう自己紹介していました。
お客様の前で話しながら、心臓がドキドキしていました。正直、怖かったです。「素人が何をやっているんだ」と思われるんじゃないか、って。
「You can buy it」——監督の一言が、すべての始まり
映画業界とは関係のないところで20年以上働いてきました。
転機は、一本のインド映画との出会いでした。
その映画の監督に「この映画を日本で上映したい」とメールで伝えたとき、監督はあっさりと返信してくれたんです。
「You can buy it」
……え、買えるの? 配給会社じゃないわたしでも?
胸がざわっとしました。よく言えば興奮、正直に言えばパニックに近い感覚です。でも、その「ざわっ」が、わたしを動かしました。
「高額な宣伝費がないと映画は公開できない」——その常識を疑った日
映画業界には、こんな思い込みがあります。
高額な宣伝費用をかけないと映画は公開できない。配給会社でないと映画は動かせない。
でも実際にやってみたら、違いました。
個人でも、誠実に動けば、劇場は動いてくれます。お客様は来てくれます。「上映させてください!」とオファーした翌日に、即日返信がきたこともあります。あのメールを開いたときの感覚は、今でも忘れられないです。
宝物を雑に扱われる悔しさを、知っている
映画が好きな人なら、一度は感じたことがあるんじゃないでしょうか。
好きな映画が、無理やり感のある宣伝をされているのを見て、「なんか違う……」と思ったこと。
わたしもそうでした。推している作品が、流行りの手法で煽られるように売られていく。言い換えると、宝物を乱暴に扱われているような、あの気持ち悪さです。
だから、わたしは決めています。誇大広告はしない。何かを下げて比較して自分の映画を持ち上げるような宣伝はしない。値引き競争にも参加しない。
「あなたが配給してくれたから、観られました」
ある上映会の終わりに、お客様から声をかけていただきました。
「あなたが配給してくれたおかげで、こんないい映画を自分は見ることができました」
この一言で、全部が報われた気がしました。
背筋がすっと伸びる感覚というか、泣きたいような、笑いたいような、不思議な気持ちになりました。「やっていてよかった」って、心の底から思えた瞬間です。
推し活は、人生を昇華できる
10年前のわたしに言えるとしたら、こう伝えたいです。
「推し活で、人生を昇華できるから大丈夫」
好きなものに真剣に向き合うことは、恥ずかしいことじゃないです。むしろ、好きなものへの誠実さが、仕事の軸になります。
関わってくれる人——制作者、劇場、スタッフ、家族、お客様——みんなが笑顔になれる。そんな仕事の仕方を、わたしはこれからも選び続けます。
今、情熱を注いでいること
現在は、『響け!情熱のムリダンガム』のラストラン上映と特別上映に向けて、動いています。
これを読んでいるあなたにも、ぜひ劇場で観てほしいです。
好きなものを、好きだと言える場所を、一緒につくっていきたいです。
まずはSNSでつながってもらえたら嬉しいです。映画のこと、配給のこと、日々の気づきなど、これからもここで書いていきます。